Marchは長野県茅野市にある(有)ディオン光学技研で生産されており、30年間以上光学機器開発経験のある熟練の日本人技術者達が、150点以上の国産精密部品をネジ一本に至るまで厳選した100%純国産部品を使用して、手作業で1本ずつスコープを組み上げている国産スコープメーカーです。
2005年、精密標的射撃の選手からの要望でスコープを作り始め、20項目以上の厳しい検査を経てから出荷する製品の品質は世界トップクラスの高品質を誇ります。
参考:https://news.militaryblog.jp/web/JGSDF-Sniper-Team-Won/First-Prize-at-AASAM-2018.html
AASAMで陸上自衛隊が狙撃部門にて優勝した時に使われており優勝の一役をになったといわれるスコープでもあります。国内外の精密標的射撃競技に鍛え上げられたマーチスコープを今回は私だけでは無くプロの方にも体感していただきレビューしていきます。
※AASAM(アーサム)とは、豪州で毎年行われる小火器の国際射撃競技会の通称。
Marach-Fを開封
非常にしっかりした厚みのある外箱で重厚感がありMarchのロゴが浮きたっているデザイン。
今回はFML‐1タイプ。タクティカルモデルになります。他にもイルミネーションタイプがあります。
しっかりした緩衝材に包まれ保護されています。
内容物一覧はこんな感じ。
15周年の記念品が入ってました。良いもの、確かなモノづくりが日本のお家芸と思います。
万人に必要なものじゃなくてもその技術力で15年というのは品質が裏付けされている証と思います。
保証はなんと10年というから驚き。
取り扱い説明書
かなり細かく詳細が記載されておりメーカーの丁寧さが伝わります。
工具とクリーニングクロス。クロスはロゴ入りでなんかオシャレ。
ズームレバーが付属品で点いているのは嬉しい。
<スコープ本体>
- 本体全長:336mm
- 重量:665g
- 対物レンズ径:52mm
- チューブ径:30mm
<本体上部>
- 写真上部がウィンテージダイヤル:ウィンテージ移動幅:17MIL
- 真ん中がエレベーションダイヤル:エレベーション移動幅:34MIL
- 写真下側がフォーカスダイヤル:フォーカス焦点距離:10yd~無限
- 1クリックの移動幅:0.1MIL
エレベーション、ウィンデージダイヤルは、大きく回しやすいタクティカルダイヤル。
エレベーションダイヤルには、設定した基準に確実に戻すことの出来る0-Setダイヤル付きです。タクティカルダイヤルタイプのエレベーションダイヤルに、0-セット装置が用意されており基準距離にセットされたダイヤル位置に瞬時に戻すことが出来る装置です。
0位置の設定が必要な時、希望の位置にエレベーションダイヤルを調整しそのままエレベーションダイヤルを動かさないように軽く押えて、コイン溝を使用して0-セットダイヤルを矢印方向に止まるまで回転させれば0-セットが完了します。以後ダイヤルをUP方向に回転させても、戻すとセット位置で止まるようになります。
0-セットを使用しない時には、コイン溝を使用して0-セットダイヤルを矢印の反対方向に止まるまで回転させれば0-セットは解除され通常のエレベーションダイヤルになります。
<本体右側面>
移動幅を示す1クリック0.1MILの表示がダイアルにあります。
ズームは3倍~24倍までの無段階調節。ダイヤルは大きく回しやすく、適度なテンションがかかっているので何かに引っかかって回るようなことはなさそうです。
<本体下部>
MADE IN JAPANの文字が誇らしい。DEON技研の刻印とシリアルナンバーも刻印されています。
- 3倍時のアイレリーフ:85-100mm
- 24倍時のアイレリーフ:89-96mm
スコープのレティクルには、ファーストフォーカルとセカンドフォーカルという2種類の方式があります。その違いは、ズームに応じてレティクルの大きさが変わるかどうかと言う点です。
ズームに応じてレティクルの大きさが変わるのがファーストフォーカル、反対にレティクルの大きさが変わらないのがセカンドフォーカルです。
ファーストフォーカルは全倍率域で、ミルドットなどのレンジファインダーが使えるのに対し、セカンドフォーカルは決められた倍率でしかレンジファインダーが機能しません。
フォーカル=フォーカスと同じ意味で、スコープ内に2つ存在する焦点のどちらにレティクルを配置しているかを示しています。
このMarch-Fはファーストフォーカルが採用されたライフルスコープでレティクルの拡大は今までで最高の8倍比を保有し、対物レンズに52mmを採用されているため薄暮時や高倍率使用時に明るく見えます。また対物レンズにはEDレンズを採用し、高解像度を得ています。
レンズフードも付属してます。
取り付けるとこんな感じ。
全長約46cmに・・・
手持ちのシュアヒットと比べてみましたが・・・レンズフードを付けたときの大きさお分かりになるでしょうか?(笑)
Marach-Fの使用感をレビュー
VSR-G SPECに取り付けてみましたがやっぱりレンズフードがあるとデカいので
外してレビューしていきます。ローマウントでセットしましたがバレルとのクリアランスが絶妙。
個人的にはこの手のスコープはやはりボルトアクションが似合うと思います。惚れ惚れするシルエット。
3倍で覗いたときの画。
ファーストフォーカルのデメリットともいえるところですがミル表示はほぼつぶれてしまって見えません。もちろん視力にもよるので個人差はあるとは思いますがミルを読んで調整するというよりは全体をつかむ感じで覗くイメージ。
でも実際サバゲーでは3倍は結構有用。
8倍ズームの画
ミルはしっかりと捉えられるようになります。
驚きなのはレンズの明るさ。レプリカなどではズームすると暗くなるものも多いのですが、かなり明るくくっきり像を映してくれます。
私がゲームや的撃ちなどで一番使いやすいと感じる倍率は個人的には4倍~5倍。ただ索敵なんかでは8倍あるとかなり便利と感じるレベルです。
そして最大24倍ズームの画
これだけズームしてもかなり明るいのがお分かりになるでしょうか?
ファーストフォーカルの特徴としてズームしたときにレティクルが拡大されるというお話は前述しましたが実際はこんな感じで拡大されるので倍率に関係なくレンジングが可能です。
第一焦点面にレチクルを持つスコープは、構造的にズームの全域においてPOA(Point of Aim)は、変化しません。
という表記がメーカーHPに記載がありますが最大のメリットといっていいのはズームをかけても着弾点がずれないということ。どういう事かというとスコープにおいてズームをかけるということは物理的にレンズの位置が移動して倍率を上げていく機構になっています。
レンズが移動するクリアランスがあるためにレティクルが接眼側にあるセカンドフォーカル(ズームしてもレティクルが拡大され無いもの)は光軸がずれてしまい狙点が若干ずれてしまうことがあります。
ファーストフォーカルは移動するレンズ側にレティクルがあるため狙点がずれないという特徴があります。実銃でAASAMや競技射撃のような場ではシビアな問題となるかもしれませんが、エアガンのレベルでは精密射撃じゃない限りはそこまで意識しなくても良いかもしれません。
でもズームされるレティクル見ると感動します。(笑)
Marach-Fを実射でレビュー
今回は元陸上自衛隊 加藤直樹さんに所感を頂きました。
最専任上級曹長を勤められ、現在は自衛隊員向けの自主トレ施設GUNTREXを運営されており、イラク派遣第1陣にも参加されたその豊富な経験からこのスコープがどう見えるのか知りたくレビューをお願いいたしました。経歴については下記リンクからご覧いただけるので参考にご覧ください。
<加藤さん談>
3倍で覗いた時にはレンズが非常に明るい印象。着弾がずれても簡単に誘導できる視界。
5倍で覗いた時も明るく委託無しでもマンターゲットなどは外すことなく25mでのヘッドショットも風の影響を受けたとしても簡単に誘導できる視界を確保できる。
射距離35mで8倍使用したときにもアイリリーフがしっかり取りやすく、陰りが全くでない。余程ずれない限りはしっかり視界を確保できる。非常に狙いやすく明るい。
レティクルについても目盛りも刻みもちょうどいい。
最大ズームの24倍というのは三脚固定など特化して使用するレベルの倍率でさすがに陰りは出てくる。射距離の35mの的だとピントが合いきらない。射距離でいうと800m~1000m以上レベルの射距離で使用すレベルでエアガンではオーバースペック。
35m10倍使用ではピントが多少合づらく、8倍~5倍がエアガンでは実用レベルかと思います。
ローマウントころにできるところはとてもよく、パララクスを抑えられる。実銃の銃弾も放物線を描くがエアガンの場合は極端に射距離が短くなることと弾道特性がホップアップをかけている都合上ある程度までフラットでその後浮き上がり、沈み込む。
じつはエアガンの弾道特性的にスコープはエアガンには向かない。ゼロインするとすればフラットで飛ぶ射距離でゼロインする。フラットに飛んだあとの浮き上がりと沈み込みは粗点のあてにならないので実銃の使い方とはちょっと変わってくる。もしくは使用する銃の弾道特性を理解したうえで40mなどのピンポイントでゼロインするなどの工夫が必要です。
ゼロインの距離は使用する人の好みや環境などで変えることが必要ですが、現実の戦闘などでは実際のゼロイン距離よりも的が近かったり、遠かったりするのが現実なのでその場合はエレべーションで調整しますが暇がなければ目盛りで読み取って距離を調整します。レティクルの種類は沢山ありミル表示は標的射撃などには向いているが、読み方を知っていないと有効に使えない。
実戦でバトルフィールドピックアップ(敵の落ちている銃を拾って使用する)で拾った狙撃銃のスコープは100m、200mとはっきり書いていたとしたら直感的にわかりやすいが現実的にはそうではなく、知識が無いと使用しずらいスコープもあるしレティクルの種類によっても左右されるのでどんな種類のレティクルかは使用するシチュエーションによって使い分けることが必要です。
しかし理屈抜きにこのスコープはエアガン、実銃と問わず使用してて楽しいスコープだとおもいます。
Marach-Fのレビューまとめ
私が今まで覗いたことのあるスコープでは最高のもので個人的には褒めるところ以外存在しないのですが、さすがにサバゲーユースではオーバースペックかと思います。
実勢価格は287,000円前後という価格からも簡単に手が出るものでも無いとは思いますが、やはり良いものは良いという印象。
実銃向けの光学機器でもっと手ごろな物は沢山ありますからサバゲーではそちらを選んだほうが楽しめるとも思いますが、加藤さんがおっしゃったその場に合わせたレティクルのものを選ぶというのは至極同感です。
一本ですべて賄うのでは無く、自分が入る状況に合わせた光学機器を複数本用意しておくというのも戦術的に有利をつかめる大きなアドバンテージになると思います。
サバゲーに投入ならこんなのもおススメ
価格はMarch-Fの約3分の1
でも良いものがほしいという方におススメ。
倍率は一緒でベクターは総じてレンズが明るいのが魅力。